システム要件を満たしてる?Windows11 中古PC選び
Windows11のシステム要件(必要なハードスペック)を完全には満たさない中古PCが売られているようです。
大手メーカーの新品PCなら心配無用ですが、中古PCの場合には注意が要ります。
本記事は、Windows11 中古PCを選ぶ際の注意点についてまとめます。
本記事の目的
- Windows11 中古PCのシステム要件に関する注意点やリスクを把握する。
基本
前提
Windows11のシステム要件は、Windows 11 の仕様とシステム要件 | Microsoftに記載があります。
古いPC本体では、CPU(世代)とTPM 2.0の要件をクリアできないことが多いです。
CPUは、”1 ギガヘルツ (GHz) 以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサ”と書かれていますが、実際にはCPU世代の要件が厳しいです。
Intel CPUだと、基本的に第8世代以降がサポートされます。一部第7世代(Skylake-X含む)もサポートされます。
最新のサポートCPUは、Windows のプロセッサの要件のリンクを辿ることで確認できます(Windows11の22H2の場合)。
TPMのバージョンは1.2もありますが、Windows11のシステム要件ではTPM 2.0が必要です。
Windows11のシステム要件を満たさない中古PC
例えば、東芝のdynabook Satellite B35(2015年モデル)にWindows11をインストールした中古PCがあるとします。
この機種は、少なくとも以下の点でWindows11のシステム要件を満たしていません(仕様)。
- CPUが第5世代(Broadwell)
- TPMは1.2(Celeronモデルの場合はTPM無し)
ただ、システム要件を満たしていなくても、制限をスキップしてWindows11をインストールすることは可能です。日常的な動作や性能面に関しては問題が無いケースも多いでしょう。
現に、このようにシステム要件を満たさない中古PCが販売されているようです。
どんな選び方をすれば良い?
本記事では、目安となる認定制度や関連ショップを紹介します。
ただし、ここで紹介するショップが販売する中古PC全てがWindows11のシステム要件を完全に満たしているという訳ではありません。
そもそも中古PCは新品に比べて”自己責任”の要素が強いので、必ず以下のポイントは抑えましょう。
- 中古PCのスペックは自分でも調べる
- システム要件を満たさない場合のリスクを認識する(詳細は後述)
その上で、納得のいく中古PCがあればお買い得でしょうし、あまり納得がいかなければ新品のPCが良いでしょう。
マイクロソフト認定再生PC事業者(MAR)
MARは、マイクロソフト再生PC用プログラムに基づく制度です。
MARというのは、Microsoft Authorized Refurbisherの略です。
所定の条件を満たす事業者だけがMARとして認定されます。
そのMARが、中古PCを再セットアップし販売するものです。
MARは、中古PCを選ぶ際の基準の1つにしても良いでしょう。
マイクロソフト認定なので、さすがにWindows OSのライセンス不正利用の心配はありません。
※注意点として、MAR自体には、おそらくWindows11のシステム要件を満たすかどうかという基準は無いように思われますので、システム要件を満たしているかどうかのチェックは購入者自身が行うことになります。
以下に、個人向けにPCを販売しているMARについて記載します。
パソコン工房
パソコン工房(株式会社ユニットコム)は正規MARです(BTOの新品PCの方が有名ですが、中古PCも扱っています)。
今回私が調べた限り、CPU、TPMのシステム要件を満たさない中古PCもあるようです(2023年2月時点)。
ただし、システム要件を満たすものもあります。ノートPCだと、価格帯が6万円台以上のものは、Windows11のCPUとTPMのシステム要件を満たしているものがありそうです(2022年12月時点)。
価格は6万円台であっても、システム要件を満たしていることを考えれば妥当かと思います(比較的新しいor上位の機種ということ)。
パソコン工房のWindows11 中古PC売り場はこちらです。
もちろんBTOのPCでも実績やコスパに定評のあるパソコン工房なので、新品PCの購入も可能です。
パソコン市場
パソコン市場(株式会社メディエイター)も正規MARです。
廉価版Office付きで2万円台から購入できるので、コスパ重視の中古PCかと思います。
今回私が調べた限り、CPU、TPMのシステム要件を満たさないものがあるようです(2022年12月時点)。
商品ページには、Windows11 中古PCに関して以下のような説明があるので、スタンスが明確という意味で安心感のあるショップかと思います。
しかし、マイクロソフトが発表しているWindows11のシステム要件は必要以上に高く、実際に機能する性能と一致していません。
…
今後、お客様にてWindowsのアップデートができないような事がありましたら、購入から1年以内なら当社にてアップデート作業を請け負います。(送料お客様負担)
パソコン市場のサイトはこちらです。
上記バナーからパソコン市場のサイトにアクセス後、以下の画像をクリックするとWindows11の中古PCを検索できます。
(参考)アンカーネットワークサービス
アンカーネットワークサービスも正規MARです。
ただし、今回私が調べた限り、Windows11 中古PCの取り扱いが無いようです(2022年12月時点)。
Amazon整備済み品(Amazon Renewed)の中古PC
Amazon独自の制度です(中古PCだけでなく、中古タブレットや中古スマホもあります)。
所定の条件を満たす認定出品者だけがAmazon整備済み品として中古PCを販売できます。
今回私が調べた限り(型番が分かる商品)、TPM2.0の要件はクリアしているものが多いです(2022年12月現在)。
一方で、CPUはシステム要件を満たさないものが多いです。
“Amazon整備済み品”自体は、正常動作の確認と、外観検査が行われているだけなので、Windows11のシステム要件を満たすかどうかとは関係ありません。
Amazon整備済み品として出品された商品は、Amazonが定める品質基準をクリアし一定の販売実績がある認定出品者(Apple認定業者とは異なります)により、正常に機能するかどうかの動作確認と新品同様に見えるかどうかの外観検査がなされています。
Amazon整備済み品
また、以下のように記載があるので、これが本当ならAmazon整備済み品はMARが再セットアップした中古PCということになります。
Microsoftのラップトップ、タブレット、およびデスクトップコンピュータには、Microsoft Authorized Refurbisherが提供する正規のソフトウェアであることを示す証明書が発行されている、真正なソフトウェアライセンスが付与されています。
Amazon整備済み品も、中古PCを選ぶ際の基準の1つにしても良いでしょう。
ワジュンPC(wajun)
Amazon整備済み品を出品している業者です。Amazon内の評価も高いです。
MARから仕入れた中古PCの取り扱いもあります(商品画像にMARの説明があるものと無いものがあります)。
今回私が調べた限り(型番が分かる商品)、TPM2.0の要件はクリアしているものが多いです(2022年12月現在)。
一方で、CPUはシステム要件を満たさないものが多いです。
Microsoft Office付きで2万円台から購入できるので、コスパ重視の中古PCかと思います。
その他のAmazon整備済み品
Amazon整備済み品を販売している業者は多いので、色々比較してみても良いでしょう。
詳細
システム要件を満たす必要性はあるか
想定されるリスク、考え方
考え方としては、“システム要件を満たしていないことに起因する問題に対処できない可能性がある”ということです。
システム要件を満たさないPCでWindows11を使用する場合、以下のようなリスクが挙げられます。
-
セキュリティ面のリスク
セキュリティ上の問題に対して修正が提供されない可能性があります。
現在は大丈夫でも、今後新たに発見されるセキュリティ上の問題に対応できる保証はありません。
例えば、CPUに脆弱性が見つかった際、そのCPUがWindows11でサポートされていない場合、修正が提供されず対処できない可能性があります。TPMも同様です。 -
機能面のリスク
本来使用できるべき機能を使用できない可能性があります。
現在は大丈夫でも、今後新たに機能が追加、変更された際に使用できる保証はありません。
最悪の事態の1つとして、セキュリティに関しては脆弱性の内容によっては情報漏えいや不正アクセス等の発生もあり得ます。あくまで可能性がゼロではないという程度ですが。
基本的に、サポートを受けられるようセキュリティを確保すべきなので、やはりシステム要件を満たしたPCを使用することが推奨されます。
ただ、上記のようなリスクを許容する場合には、システム要件を満たさないPCを使用するという選択肢はあります。実際、安価な中古PCに対するニーズがあるのも事実です。
Microsoftの説明
システム要件を満たさないPCでWindows11を使用することに関し、Microsoftは以下のように説明しています。
Windows 11 の最小システム要件を満たしていないデバイスに Windows 11 をインストールすることは推奨されません。 不適格なハードウェアに Windows 11 をインストールする場合は、互換性の問題が発生するリスクを想定しておく必要があります。
これらの互換性やその他の問題により、デバイスが正しく機能しない可能性があります。 これらのシステム要件を満たしていないデバイスは、セキュリティ更新プログラムを含む更新プログラムを受け取ることが保証されなくなります。
最小システム要件を満たしていないデバイスに Windows 11 をインストールした場合、以下の免責事項が適用されます。
この PC は、Windows 11 を実行するための最小システム要件を満たしていません。これらの要件は、より信頼性が高く、より高品質のエクスペリエンスを保証するのに役立ちます。 この PC に Windows 11 をインストールすることはお勧めできません。互換性の問題が発生する可能性があります。 Windows 11 のインストールを続行すると、PC はサポートされなくなり、更新プログラムを受け取る資格がなくなります。 互換性の欠如による PC の損傷は、製造元の保証の対象外です。
“禁止”や”ライセンス違反”ではなく、”推奨しない”ということです。
上記の記載のうち、リスクに相当する箇所は以下です。
-
互換性の問題
前述の”機能面のリスク”に相当します。 -
セキュリティ更新プログラムを含む更新プログラムを受け取ることが保証されなくなります
前述の”セキュリティ面のリスク”、”機能面のリスク”の両方に相当します。
その他、Windows 11 をインストールする方法では、TPMとCPUに関する要件をバイパスするためのレジストリ、AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU
についても触れられています。また、クリーンインストール時にはCPUのチェックは行われない点についても説明があります。
Microsoftとしても、ある程度システム要件を満たしていないPCにWindows11がインストールされるケースがあり得ることは想定しているということです。
もちろん、サポートを受けられなくなる可能性がある点は添えられていますが。
Windows10を使い続けるという選択肢
“システム要件を満たさないWindows11 PCは使いたくない”
…けど
“高価なPCを、今わざわざ購入したくもない”
という場合には、Windows10をもうしばらく使い続けるという選択肢があります。
Windows10のHomeやProは2025年10月14日までサポートされます。
通常のPC利用であれば、Windows11をすぐ使わなくても問題は無いでしょう。
例えば、Windows11リリースによってさらに安価になっているであろうWindows10 中古PCを購入するのも良いでしょう。
あるいは、お手元のPCがWindows8.1であれば、Windows10へのアップグレードを検討しても良いです。
Windows10へのアップグレード(再セットアップ)に関しては、以下の記事にまとめてあります。
その心は、Windows12リリース待ちだったり
※Windows12がリリースされるかどうか、またその時期については未確定です(2022年12月時点)。
実は、Windows10を使い続けるということは、”Windows11をスキップして、2024年頃にWindows12(Next Valley)がリリースされたときにPC本体を買い替える”というプランにつながります。
ちょうどWindows10のサポート終了に先立ちWindows12がリリースされたら、Windows11のことを気にせず最新のWindows12 PCを買えば良いということです。
もちろん、次期Windowsに相当するのでWindows11よりシステム要件は厳しいものになるでしょう。さらに、Windows11のように、システム要件を満たさない場合にその制限をスキップしてインストールやアップグレードするというオプションが無くなるかもしれません。
どんなソフトウェアにもライフサイクルはあるので、このように2~3年先のリリースを予想して検討するという手はあるということです。
まとめ
本記事では、Windows11 中古PC選びのポイントや目安となる認定制度、関連ショップについて紹介しました。
中古PCは新品よりも安価に購入できるので、やはりPC選びにおける選択肢の1つと言えます。
一方で、Windows11のシステム要件は従来のWindowsに比べ厳しいものです。
さらに、そのシステム要件を満たさなくてもWindows11は動作するというのもややこしいです。
システム要件を満たさない場合には自己責任となるものの、そもそもそのような選択の余地を残(して大きな批判をかわ)すところになんとなくMicrosoftらしさを感じました(個人の感想です)。
(余談)Windowsのシステム要件をどう捉えるか
多くのPC初心者が使用するOSにしては、”従来のシステム要件が緩すぎだった”と捉える方が自然なように思います。
使っているPCのスペックがシステム要件ギリギリなだけなのに、”Microsoftの要件を満たしているのに遅い!!”と困るユーザが増えるくらいなら、最初からシステム要件を厳しくしておいた方が結果的にユーザ全体の満足度を維持しやすいでしょう。
また、システム要件を厳しくしておけば、その要件を満たさないPC(従来であれば”システム要件ギリギリのPC”)を使用するのは、ある程度リテラシーのあるユーザがリスクを理解して選択するケースがほとんどになるでしょう。
重大なセキュリティ対策やバグ対策さえ担保できれば、様々なユーザが共存するエコシステム全体としてはそのような方向性の方が健全な気がします。
- 古いPC、中古PCのこと
- Windowsライセンスのルールのこと
- Windowsライセンスの実装のこと