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(図解)NTPと関係する時刻系まとめ (UTC、UT1、TAI等)

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NTPと関係する時刻系、関連用語を整理しておこうと思いました。
本記事は、そのあたりを図解付きでまとめたものです。
主にUTC、UT1、TAIと、うるう秒あたりに触れます。

※素人なりに調べてまとめてありますが、不正確な点はあると思います。ご了承願います。

本記事の目的

  • NTPと関係する時刻系、関連用語をできるだけ整理する。

目次

基本

ざっくり図解

NTPと関係する時刻系まとめ
NTPと関係する時刻系まとめ

詳細は後述しますが、ざっくり以下のようなポイントです。

  • NTPにより、System ClockをUTCに同期する
  • うるう秒により、UT1-UTCが±0.9秒以内に収められる

ざっくり表

名称 名称
(日本語)
決定方法 1秒の長さ 提供元
UTC 協定世界時 TAIをUT1に近似
(うるう秒による調整)
ほぼ一定 ※1
(TAIと同じ)
BIPM
TAI 国際原子時 原子時計で計算 ほぼ一定 ※1
(SI秒)
BIPM
UT1 世界時 天文的な観測・計算(VLBI) 不定 IERS ※2

※1:ここでは、UT1との簡単な対比のため”ほぼ一定”と表現(詳細は後述)
※2:UT1が決定される過程を把握しきれなかったので、ここでは、IERSが提供するUT1-UTCのデータが、公式なUT1の値を含むという意味で記載

基本的な用語の整理

  • System Clock

    • コンピュータシステム内の時計です。
    • NTPクライアント等の時刻同期機能により、その時刻を修正できます。
  • NTP(Network Time Protocol)

    • System Clockを同期するために広く使用されているプロトコルです。
    • NTPのアルゴリズムは、System ClockとUTCとの差を最小化するためのものです。
      (RFC5905より、”The goal of the NTP algorithms is to minimize both the time difference and frequency difference between UTC and the system clock.”)

  • Leap seconds(うるう秒)

    • UT1-UTCを±0.9秒以内に維持するための調整として、UTCに対して1秒単位で挿入あるいは削除される秒です。
    • その調整の実施は、国際地球回転・基準系事業(IERS)が決定します。
    • 2035年までにうるう秒が廃止される件については、別記事にまとめてあります。
  • UTC(Coordinated Universal Time、協定世界時)

    • 世界各地の標準時の基準となる時刻系です。
    • UTCとTAIとの差は整数秒であり、その差は、今までに挿入あるいは削除されたうるう秒の累積値と同じです(2017年1月1日以降、2022年11月時点で-37秒)。
      別の言い方では、UTCは世界時(UT1)に近似するよう調整された原子時系(TAIと同じ時刻系)です。
    • 1秒間の長さは、TAIと同じです。
      1秒以上の精度が必要されない場合、UTCはUT1の近似値として使用できます。
    • UTCはBIPMが決定します。
    • UTCは各タイムゾーンにおける標準時(standard time)を決定する際の基準になることが多いです。
    • うるう秒による調整が発生し得るため、不連続な時刻系です。
  • TAI(International Atomic Time、国際原子時)

    • 世界各地に設置されている原子時計の時刻を加重平均したものです。
    • 1秒間の長さは、SI秒に基づきます(SI:国際単位系)。
    • TAIはBIPMが決定します。
    • UT1に比べ1秒間の長さが正確です(詳細は後述)。
    • うるう秒による調整が発生しないめ、連続した時刻系です。
  • UT1(Universal Time)

    • 世界時(Universal Time:UT)の1つです。世界時の種類にはUT0、UT1、UT1R、UT2があり、区別しない場合はUTです。
    • 平均太陽時(Mean Solar Time)に基づいています。
      • 平均太陽時は、一定のスピードで動く天体を平均太陽とみなし、それに基づき決定されるようです(参考:国立天文台)。
    • 地球の自転、太陽の位置に基づく時刻系です。
      • 時間間隔は精密ではなく、LOD(Length of Day)は一定ではありません。従って1秒の長さも不定です。
      • 地球上の生物にとっては感覚的に分かりやすい時刻系と言えるでしょう。
  • GMT(Greenwich Mean Time、グリニッジ標準時)

    • グリニッジ天文台・グリニッジ子午線(経度0度)における平均太陽時です。
    • 以前は、GMTが世界各地の標準時の基準となっていました。現在はUTCがその基準です。
    • 分野によって、GMTという単語、あるいは”G.M.T.”、”Z”という用語は、実際にはUTCのことを指す場合や、GMTがUT1のことを指す場合もあります。
    • GMT = UTC+00:00 です。
  • JST(Japan Standard Time、日本標準時)

    • JSTは、UTC(NICT)を9時間進めた時刻です。
    • JSTはNICTが決定します。
    • JST = UTC+09:00 です。
    • NICTの説明によると、BIPMが決定するUTCとは別に、NICTは”UTC(NICT)”を決定しており、この”UTC(NICT)”からJSTが決定されているそうです。
      NICTは、UTC(NICT)を、UTCとの差が±10ナノ秒以内となるよう管理しているそうです。
    • NICTでは、JSTを配信するNTPサーバ(stratum 1)が稼働しています。
      このNTPサーバは”日本標準時(JST)”を基準としています。世の中の多くのstratum 1は、”米国標準時(GPS)”を規準としています。

その他の用語の整理

  • 標準時(standard time)

    • 特定の国や地域の範囲内(タイムゾーン)で使用される時刻系です。
    • 各タイムゾーンにおける標準時は、UTCとの差が1時間もしくは30分単位になる経度の地点の時刻を用いることが多いです。
  • 常用時、市民時(civil time)

    • 日常生活の基準となる時刻系です。
    • 常用時は、一般にはその地域の政府が定める標準時(standard time)です。
    • サマータイムを実施する地域においてはサマータイムの期間中は1時間早まります。
  • GPS時刻

    • GNSS(全球測位衛星システム)の1つであるGPSにおいて使用される時刻データです。
    • GPS時刻は、1980年1月6日0時0分0秒(UTC)が基点です。その時点では、UTC-TAIが-19秒だったため、GPS時刻はTAIから常に19秒遅れた時刻です。
    • うるう秒による調整は行われません。
    • 1秒間の長さは、TAIと同じです。
    • 参考URL:国立天文台のGPS説明ページ
    • GPSを参照するNTPサーバが、GPS時刻でなくUTCで時刻同期できる理由については後述します。

詳細

GPSとUTC

NTPはUTCを基準に時刻同期を行いますが、前述の通りGPS時刻はUTCとは異なる時刻データです。

ここでは、GPS時刻がどのようにUTCに変換され、NTPで使用できるようになるかを簡単に記載します。
※全てのケースに当てはまる説明ではないと思います。

GPS衛星
 ↓ 航法メッセージ(GPS時刻+UTC補正値)
GPS受信機
 ↓ NMEA(UTC)
NTPサーバ(stratum 1)

GPS衛星から得られる航法メッセージには、GPS時刻の他、UTCとGPS時刻の差に関する値が含まれています。
GPS受信機内でUTCに変換されてから出力されるようです。
(GPS時刻とUTCの時刻差はうるう秒の累積値により変動するので、一律に変換することはできません)

GPS受信機から時刻データを得るには、NMEAというプロトコルが使用されるようです。

より詳細については、GNSS(GPS等)の航法メッセージやNMEAのフォーマットについて確認が必要です。

リファレンスクロック(stratum 0)

NTPにおいて、原子時計やGPS、電波時計などの高精度の装置はstratumは0と呼ばれることがあるようです(リファレンスクロック)。
stratum 1のサーバは、参照先のリファレンスクロックの種類に応じた文字列(“GPS “等)をNTPのヘッダ内のrefidに含めることになっています。
(RFC5905 7.3. Packet Header Variablesより)

TAIは実際の時刻を過ぎてから決定される

TAIは世界各地に設置されている原子時計の時刻を加重平均したものなので、最高精度の計算結果は、実際の時刻を過ぎてから(計算が終わってから)得られます。

その計算結果を待たずにリアルタイムのTAIを参照するには、過去データを基づくリアルタイム評価値や、GPS衛星から送信される時刻信号を用いるようです。

参考:国際原子時(Wikipedia)

時刻系の原点や調整

  • TAI

    • 1958年1月1日0時0分0秒 TAI開始
    • 1977年に歩度調整あり
  • UTC

    • 1972年1月1日0時0分0秒 UTC開始
    • この時、特別調整としてTAIが1972年1月1日0時0分10秒(UTC-TAIが-10s)となった(以降、UTC-TAIは整数秒)

UTC(TAI)の精度

NICTのQ&A集に、実際のところは、標準時の1秒1秒の刻みの正確性、どうやって確かめるのでしょうか?という質問が掲載されています。

この質問に対する回答の中に、協定世界時の精度は“数100万年に1秒の誤差”と記載されています。世界協定時(UTC)とありますが、実際にはTAIの原子時計の加重平均による時刻算出の話なので、TAIの精度についての説明です。

UTCとTAIの定義(BIPMより引用)

The formal definition of UTC and TAI was adopted by the CGPM in 2018.
BIPM technical services: Time Metrologyより

the CGPM at its 15th meeting (1975) noted that Coordinated Universal Time (UTC), derived from TAI, provides the basis of civil time, and strongly endorsed this usage,

UTC provides a means to measure time intervals and to disseminate the standard of frequency during intervals in which leap seconds do not occur,

International Atomic Time (TAI) is a continuous time scale produced by the BIPM based on the best realizations of the SI second. TAI is a realization of Terrestrial Time (TT) with the same rate as that of TT, as defined by the IAU Resolution B1.9 (2000),
Coordinated Universal Time (UTC) is a time scale produced by the BIPM with the same rate as TAI, but differing from TAI only by an integral number of seconds,
Resolution 2 of the 26th CGPM (2018)より

参考URL

NICTの日本標準時グループ

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