メルカリの事業から考える経済感覚
フリマアプリで有名なメルカリですが、そのグループ全体の事業展開やテーマ性が気になり、少し調べてみました。
私自身、昔からヤフオクやメルカリ、あるいはリアルイベントのフリマ等で、中古品等を個人間 (CtoC) で売買するサービスが好きだったりもします。近年では、フリマアプリ自体の進歩はもちろん、FinTechとの連携もあって面白いです。
本記事では、メルカリグループのMarketplace、FinTech等の各事業領域と、関連する経済の用語、また私たちが身近に利用できるメルカリのサービスについてまとめます。
メルカリグループの事業
メルカリは “循環” をテーマとしたミッションを掲げており、日本国内の主な事業セグメントは、メルカリJP、ソウゾウによる Marketplace と、メルペイ(メルカード含む)、メルコインによる Fintech の2つです。
本記事では、MarketplaceとFintech関連についてまとめます。US等については省略します。
Marketplace セグメント
国内フリマアプリとしては最大手のメルカリ(※)ですが、最近の資料からもMAU (月間利用者数) 2,200万人以上、累計出品数30億品以上と、インパクトのある数字を読み取れます。
(※) 経済産業省 令和3年度デジタル取引環境整備事業 電子商取引に関する市場調査 参考資料
売上高や営業利益も伸びています。
さらに今後の伸びしろとして、出品意向はあるが未出品の人 (潜在出品顧客) のデータが挙げられています。確かに、出品に興味があってもできていないという人は多いでしょう。
私の個人的な感覚としても、中古品を含む個人売買の潜在的な価値として、仮に “皆の手元にある要らないもの” すべてを最適な需給と価格に基づいてマッチングできたとしたら、とても大きな規模の取り扱い金額になると思います。面白いです。
2021年のデータに基づき、Marketplaceに関連するフリマアプリ市場は約1.2兆円 (参考)、オンラインCtoC市場は約2.2兆円 (おそらくネットオークション分も足した数値) と説明されています。
さらに2022年のデータ (2023年公表) では、リユース業界の市場規模 (EC、実店舗含む) が2025 年には 3 兆 5,000 億円に達すると予測されています (参考)。
フリマアプリやネットオークションが登場する以前からも、不用品買取 (引き取りや回収も含めて) のようなサービス自体はあったはずですが、メルカリやヤフオクのようなインターネットを活用したサービスの普及により、その市場の様態が徐々に可視化されていると感じます。
メルカリの Marketplace セグメントは、このような成長分野において最大手のポジションにあるということです。
今後の強化領域として、カテゴリー強化、越境取引 (※)、BtoCのため、UX改善やAI/LLM活用が挙げられています。また、ロイヤルティプログラムの開始についても触れられており、おそらくFinTechセグメントと連携した囲い込み系の施策になると思われます。
(※) 越境EC事業者と連携し、メルカリに出品されたアイテムが海外110か国以上で購入 (アニメ、アイドルグッズが人気らしい)
FinTech セグメント
続いて、株式会社メルペイを中心としたFinTech セグメントについてです。
スマホ決済やクレジットカード、後払いサービス、資産運用 (メルコイン) 等の領域があります。
スマホ決済アプリのメルペイについては、他の大手系の○○ペイと比べて利用者数は少ないのですが、生活インフラサービスを提供するような “経済圏” を持たない事業者としては非常に多いという見方もできます (メルカリのアプリ内にメルペイが入っているから利用者数が多くなるという話だとは思いますが)。
ちなみに、d払いとの共通QRコード利用というのもあります (d払いに対応した店舗でメルペイが使えるのかメルカリに問い合わせてみたのですが、スッキリした回答はいただけませんでした。実際にはメルペイがd払いの包括加盟店となることで実現しているらしいので、d払いに対応した店舗でメルペイが使えるという訳ではなさそうです:参考)。
また、メルペイ、メルカードでは、独自に “信用” を判断しているようです。
属性情報でなく行動実績、具体的にはメルカリの取引実績により “約束を守っていただけるか否か” を判断することが説明されています。
AI与信についても認定第一号で認定取得しており、新しい取り組みに対して積極的です。
その他、メルカード発行枚数の150万枚突破 (2023年9月) や、メルコインによるメルカリアプリ内でのビットコイン売買等、色々と成長中です。
メルカードの好調要因についての説明の中で面白かったのは、メルカードの「まえもって支払う」機能がZ世代と相性が良いという点です。その理由として、Z世代は他の世代と比べて、「想定外」を失敗やストレスと捉えやすい”サプライズアレルギー”を持つ傾向にあるという調査結果が挙げられています。
“メルカリの売上金が入る度に都度メルカードの支払いに充てられる” という使い方が、”使い過ぎが怖い” というZ世代の気持ちをうまくフォローできているようです。これは、単一のプラットフォーム内で収入 (売上金) を得られるメルカリならではの仕組みで、他のクレジットカードには無い強みになりますね。
なお、メルカリで商品を購入するユーザが、支払い手段を他社のクレジットカードからメルカードに移行してくれるというだけでも、決済手数料削減によるコスト圧縮効果があるので、やはり自前の金融サービスは大事ですね。
ちなみに、ナンバーレスや通知、アプリからの利用停止といったスペック、また普通郵便で届いてから有効化する手順等、セキュリティ面も考慮されています。
最近では、メルカリの売上金でビットコインを買えるようにもなっていて面白いです。
私も試しにメルカリの売上金で10,000円分、ビットコインを買ってみました。値動き激しいですね (ちょっとプラス)。
メルカードを含め、新規サービスに30億円ほど投資しているようで、積極的です (利用者としては、お得なキャンペーンに参加するなら今のうちですね)。
という感じで、FinTechセグメントでは新しい取り組みも多く、独自のアプローチにより、メルカリ全体がプラットフォームとしての存在感を強めている印象です。
US セグメント
USの方は好調とは言えないようですが、リユース市場のポテンシャルは⼤きく、プロダクトのアップデート等によりZ世代を獲得しながら事業を成⻑させていく方針とのことです (参考)。
リユース市場と経済
メルカリがミッションに掲げる “循環” は、リユース市場と関わりの深いテーマです。
CtoC では、リユース (モノの二次流通) が多いです。
CtoCにはハンドメイド品の売買というパターンもあり、それらはリユースに該当しませんが、ここでは省略します。
そんなリユース市場と経済の関係性について、個人的な勉強メモ程度の内容ですがまとめておきます。
中古品の売買はGDPに計上されない
リユース市場の取引金額は、基本的にGDPに計上されないようです。
確かに、中古品の売買は “新たな付加価値の生産” ではないので、GDPに計上できないですね (仲介手数料等はGDPに計上されます)。
- 経済学に詳しい方お願いします。中古の商品売買がGDPに換算されないのは… – Yahoo!知恵袋
- 急成長するフリマアプリが、日本経済に革命をもたらすかもしれない(加谷 珪一) | 現代ビジネス | 講談社(2/2)
- シェアリング・エコノミーの GDP 統計における捕捉の現状 [内閣府経済社会総合研究所「季刊国民経済計算」第 164 号 2018 年]
では、リユース市場と経済を考える上で、GDP 以外に、どのような観点があるのでしょう。
リユース市場があると新品を買いたくなる説
過去の研究では、自動車などの耐久財の場合,リユース市場は新品市場に負の影響を及ぼすことが明らかになっているそうです (参考)。
ただ、消費者レベルの観点では、リユース市場をきっかけとしたブランド認知の促進や、リユース市場があることを前提とした後で高く売れそうな新品商品の購入等、リユース市場が新品市場に及ぼす影響は必ずしも負の側面だけではなさそうです。
以下は、経済産業省の報告書からの引用です。
5.2.4 一次流通と二次流通の関係性
二次流通市場は、一次流通によって製造・販売された製品が消費者の手で流入されることによって市場が形成されるため、一次流通の事業者の存在なくして二次流通の市場の形成は不可能である。一方で、一次流通の事業者の目には、二次流通市場は自社の領域を侵食する敵対関係にある存在のように見られることもある。しかしながら、二次流通を入口にブランドの認知が広まることで、新品が欲しいとの消費者願望の芽生えから、やがて一次流通側がその恩恵を受けるというシナリオも考えられる。
さらに上記では、二次流通事業者と一次流通事業者が相互に保有するデータを連携する動きがあることも記載されています (メルカリのファクトブックでも触れられています)。
以下は、J-STAGEからの引用です。
二次流通市場で売買する消費者に関する消費者レベルの研究においては,二次流通市場の存在は一次流通市場における購買を後押しするというものであった。これは,次のように考えることができる。ここで,Xは製品Aの価値,Yが一流通市場における製品Aの価格とする。そして,v(X)は製品Aを所有することの価値,v(Y)は現金を使わないことの価値,すなわち製品Aを購入しないことの価値と置くと,v(X)−v(Y)<0の場合に消費者は製品Aを購入しない。ここで,二次流通市場が存在したとして,v(Z)を二次流通市場における売却価格とすると,価値関数はv(X)−v(Y)+v(Z)となり,二次流通市場がない場合と比較して,この値が負となる可能性は論理的に低い。つまり,二次流通市場の存在は,購買における消費者の損失の可能性を下げるため,一次流通市場における購買のハードルを低下させ,購買を後押しするのである。
シェアリングエコノミー、サーキュラーエコノミー
持続可能な循環型社会等の実現のため、シェアリングエコノミーという考え方があります。政策としても推進されているものです。
フリマアプリ等での中古品の売買も含め、様々なリソースを再利用、有効活用するものです。
また、関連する用語として、モノの再利用に関しては、サーキュラーエコノミーという言葉もあります。
- 総務省|平成27年版 情報通信白書|シェアリング・エコノミーとは
- シェアリングエコノミーの推進|デジタル庁
- 環境省_令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第2章第2節 循環経済(サーキュラーエコノミー)
- メルカリ、三菱総合研究所とシェアリングエコノミーに関する共同研究を実施 | 株式会社メルカリ
リユース市場とメルカリとFinTech
メルカリは国内でMarketplace (リユース市場) とFinTechという2つのセグメントを持っています。
このセグメントの組み合わせ自体の強み以外に、メルカリはUXやTechを活かして利用者に価値をうまく届けてくれると思うので、個人的には今後も期待したいところです。
その結果、そのセグメントに強みを持った “特化型の経済圏” のようなプラットフォームにもなると思います。
(あとついでに三井住友カードユーザの自分としては、SMBCグループとCtoCやポイント等の一部の分野だけでも提携してくれないかな、と思ったりもします…)
メルカリ、メルカードをお得に始める方法
ここまで、メルカリの事業や関連する経済の用語等についてまとめてきました。
最後に、メルカリを始めてみたいと思われた方、メルカリを使ったことはあるけどメルカードやメルコインも使ってみたいと思われた方は、以下の記事もご覧ください。
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まとめ
本記事では、メルカリグループのMarketplace、FinTech等の各事業領域と、関連する経済の用語、また私たちが身近に利用できるメルカリのサービスについてまとめてみました。
参考
- 私たちについて | 株式会社メルカリ
- ロゴについて (ブランドガイドライン) ※2023年11月時点で参照済み
- 急成長を続けるフリマアプリ市場|株式会社ナビットのプレスリリース