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(4) RHELソースコード一般公開停止後のOracleのコメント

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解説はこちら

Red Hat社が、従来は一般公開されていたRHELのソースコードを顧客やパートナーにのみ提供するよう方針変更しました。

その後、Oracle からコメントが出ているので、本記事でメモしていきます。

RHELソースコードの一般公開停止の件の概要は、以下の記事にまとめてあります。

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目次

Oracle のブログ記事

以下のブログ記事が発信されています。

気になる方は原文をご覧いただけたらと思いますが、以下のような内容です。

皮肉と煽り

格好としては、”Red Hat (IBM) に対する皮肉たっぷりの煽り記事” という印象です (個人の感想です)。

今回のブログ記事で、主に名指しされている社名は、Red HatでなくIBMです。

IBMは2019年にRed Hatを買収しました。

そのRed Hat、IBMに対し、大企業にしてはかなり明確な皮肉や煽りを公に発信しています。

非難されにくいスタンス

これまでのRed Hat側のスタンスは、アップストリームへの貢献に関する価値の訴求や、今回の件の発端となったRHELのソースコード公開停止やダウンストリームへの批判等を発信するものでした。ソースコード公開停止やダウンストリームへの批判等については、各所から否定的な反応もあるところです。

これに対し、Oracleは自らのアップストリームへの貢献に加え、Red Hat側とは対照的にソースコードの公開、ダウンストリームの歓迎を示しています。

これは、Red Hat、OSSコミュニティ、ユーザ、どの立場からも直接的には非難されにくいスタンスを表明したと言えるでしょう。

Oracleという営利企業がそのスタンスをアピールすることは、Rocky LinuxやAlmaLinuxのそれとは異なる意味合いにもなります。

アップストリームへの貢献

Oracleのブログ記事からの引用です。

Our Linux engineering team makes significant contributions to the kernel, file systems, and tools. We push all that work back to mainline so that every Linux distribution can include it.

ソースコードの公開、ダウンストリームの歓迎

同じく、Oracleのブログ記事からの引用です。

Oracle makes the following promise: as long as Oracle distributes Linux, Oracle will make the binaries and source code for that distribution publicly and freely available. Furthermore, Oracle welcomes downstream distributions of every kind, community and commercial. We are happy to work with distributors to ease that process, work together on the content of Oracle Linux, and ensure Oracle software products are certified on your distribution.

(参考) RHEL互換性の重視=コミュニティの尊重

同じく、Oracleのブログ記事からの引用です。

We chose to be RHEL compatible because we did not want to fragment the Linux community.

Red Hat (IBM)に対する指摘

Red Hatによるソースコード公開停止はエンジニアに報酬を支払うため、ではなく、IBMの収益機会を増やすためではないかと指摘しています。

Interesting. IBM doesn’t want to continue publicly releasing RHEL source code because it has to pay its engineers? That seems odd, given that Red Hat as a successful independent open source company chose to publicly release RHEL source and pay its engineers for many years before IBM acquired Red Hat in 2019 for $34 billion.

And perhaps that is the real answer to the question of why: eliminate competitors. Fewer competitors means more revenue opportunity for IBM.

いち営利企業が他の営利企業に対して指摘するようなことでもないような気がしますが。

最後に一発

IBMに対し、RHELをOracle Linuxのダウンストリームにしないかと提案しています。

Finally, to IBM, here’s a big idea for you. You say that you don’t want to pay all those RHEL developers? Here’s how you can save money: just pull from us. Become a downstream distributor of Oracle Linux. We will happily take on the burden.

背景:OCIでのRHELサポート

つい最近の2023年1月31日に、OracleとRed Hatは、Oracle Cloud Infrastructure (OCI) 上でのRHELの正式サポートを発表していたところです。

いくつかリンクを載せておきます。

このときのOracleのリリース記事では、IBMでなく、Red Hatと呼んでいますね。

協力的な関係を構築できたように見えたところでした。

以下の記事に、解説があります。

OracleとRed Hatのわだかまりのきっかけは、2006年に米国で開催されたOracle OpenWorldにまで遡る。

さらに2010年にはRed Hat Linuxとの互換性は維持しながら、エンタープライズ向けの修正、拡張を施したUnbreakable Enterprise Kernelも開発し提供する。これにより、さらに両社の距離は離れる。

Microsoftでさえ、2015年11月にRed Hatとの協業を発表、RHELのAzureでの稼働を正式にサポートしている。そこから遅れること7年あまり、ようやくOCIでRHELがサポートされたわけで、これだけの時間が必要だったのはそれだけOracleとRed Hatの溝が深かったのだろう。

上記の記事の続きは、興味がある方は会員登録 (無料) をして確認いただけたらと思いますが、”OCIでもRHELは必要だった” という日本オラクル社の見解にも触れられています。

ユーザはOCI上でOracle Linux、RHELのどちらも選べます。

ブログ記事の意図

Oracleが今回発信したブログ記事は、新たな事業計画や製品、サービスの発表ではありません。

ただ煽ることが目的の記事なら、もっと早く発信した方が効果的だったでしょう。

個人的には、Oracleがビジネスの当事者としてきちんと状況を見定めた結果、以下の目的で今回のブログ記事を発信したように思います。

  • フィールド対応 (自社ユーザー) の不安を緩和

  • いいかげん何か発信しないとRed Hatに同調していると思われてしまうことの回避

  • (ついでに) これを機にOCI上のLinuxをRHELでなくOracle Linuxベースにしませんか

Enterprise Linux (RHEL系) における自社のポジションや戦略に配慮した結果ではないでしょうか。

互換性の問題が発生するリスクが高まるという言及

OracleがどのようにRHELソースコード、あるいはその代替を入手しているのかは明確になっていませんが、今後、Oracle LinuxとRHELの互換性に関する問題が発生する可能性は高くなる点について言及しています。

We will continue to develop and test our software products on Oracle Linux. Oracle Linux will continue to be RHEL compatible to the extent we can make it so. In the past, Oracle’s access to published RHEL source has been important for maintaining that compatibility. From a practical standpoint, we believe Oracle Linux will remain as compatible as it has always been through release 9.2, but after that, there may be a greater chance for a compatibility issue to arise. If an incompatibility does affect a customer or ISV, Oracle will work to remediate the problem.

極端な例ですが、今後Oracleがサポートの現場で、”互換性に関する不具合をRed Hat (IBM)のせいにする”、”RHEL上でのみ発生するトラブルを過度にRed Hat (IBM)のせいにする” といったことが生じたり、Unbreakable Enterprise Kernel 等の自社OSの方を積極的に売り出すようなことがあれば、伏線回収フラグなのかなと思います。

参考 (OCI関連)

まとめ

本記事では、RHELソースコードの一般公開停止後の、Oracle のコメントについてまとめてみました。

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