報酬が数万円…だけど、とあるVPNサービスの紹介案件を見送った話(DoFollowリンクの考察)
当サイトのような小さなブログでも、たまに案件のご案内をいただくことがあるのですが、内容によってはお受けできない場合があります(可能なものは適宜対応させていただきます)。
先日、とあるVPNサービスの紹介記事(そのサービスへのリンク)を掲載するだけで数万円の報酬をいただけるという効率の良さそうな案件をご提示いただいたのですが、”DoFollowリンク” という条件付きだったため見送らせていただくことにしました。
本記事では、一部の情報は伏せますが、この案件の概要と、私が確認した技術的なポイントに触れつつ、経緯をまとめておきます。
案件の概要
とあるマーケティング関連の事業者の方から、以下のような案件をご紹介いただきました。
- 条件
-
- とあるVPNサービスの紹介記事(そのサービスへのリンク)を当サイトに掲載するだけ
- プロのライターが当サイトに合わせて、その紹介記事を作成することも可能
- ただし、そのリンクは “DoFollowリンク” であること ※具体的な定義のご提示は無し
- 報酬
-
- 数万円 ※具体額の記載は控えるが、2~5万円の範囲のうち特定の金額を仮提示いただいた
- その他
-
- PR表記が必須かどうかを当サイト側に確認するやり取りあり
プロのライターに記事を作成してもらって掲載するだけで数万円の報酬?ほとんど何もしなくて良いので、至れり尽くせりの条件ではありませんか。
…でも、DoFollowって何でしょう。PR表記の確認も気になります。
本記事では、この案件について考察していきます。
案件の関係者と構図
この案件の関係者は以下のようなイメージです(私の推測です)。
とあるVPNサービスの事業者
↓ (依頼、報酬支払い)
マーケティング関連の事業者
↓ (依頼、報酬支払い)
メディア運営者(ブログ、SNS等)
※メディア運営者は依頼のあったリンクを掲載
メディア運営者が当サイト(私)のことで、マーケティング関連の事業者が当サイトにご案内をしてくださった方のことです。
DoFollowリンクとは (ざっくり)
案件をご案内いただいた事業者の方からは、DoFollowリンクが具体的に何を指すのかについて、説明はありませんでした。
そのため、私なりの理解に基づいて、まとめておきます。
- DoFollowリンクとは
-
- その属性値として、
rel="nofollow"
を含まないリンク - 広義には、さらに、その属性値として、
rel="sponsored"
も含まないリンク
- その属性値として、
- ざっくりとした意味
-
rel="nofollow"
やrel="sponsored"
の属性値を含まないリンクを、それなりの他サイトに掲載してもらうことにより、Google等の検索エンジンによるリンク先の評価を向上させ、検索順位をアップさせるというSEOにおけるメリットがあると考えられます。- ただし、”リンクを他サイトに掲載してもらう” ことに対して報酬等が発生する場合、つまりそのリンクが “有料リンク” である場合、そのリンクに対して
rel="sponsored"
かrel="nofollow"
を設定しないと、検索エンジン (例:Google) のポリシー等に違反することになってしまいます。
よって、今回のようなDoFollowリンクの掲載により報酬が発生する案件には、DoFollowリンクのSEOにおけるメリットにより、商品やサービスのマーケティングを優位に推進するという目的があるはずです(検索エンジンのポリシー等に違反するリスクをとってでも) 。例えば、その商品やサービスのWebサイトのの検索順位が上がって、アクセス数が増える等。
DoFollowリンクとは (もう少し詳しく)
もう少し詳しくrel="nofollow"
等について確認しながら、DoFollowリンクの意味合いをまとめていきます。
rel="nofollow"
の意味-
- HTMLの仕様(HTML Living Standard, 23 October 2024時点を参照)では、リンク元がリンク先を支持しないこと(not endorsed)、あるいはリンク元とリンク先の関係者の間の商業的関係を主な理由としてそのリンクが存在することを示すものです。参考として、MDNの説明はこちら。
- また、SEOの観点でGoogleの検索セントラルのドキュメントを参照すると、リンク元の自サイトとリンク先を関連付けたくない場合、またはリンク先のページをリンク元からクロールさせないようにする場合に、
rel="nofollow"
を使用することになっています。この関連付けは、一般的なSEOの説明において自サイトの評価をリンク先に渡すという意味合いで扱われ、評価の高いページからリンクされたページは評価がより高くなると考えられているようです(GoogleにおけるPageRank)。また、後述の有料リンクに対して、このrel="nofollow"
もしくは後述のrel="sponsored"
を設定するよう案内されています。 - 一方で、
rel="nofollow"
を含まないリンク、つまり通常のリンクについての直接的な定義はありませんが、rel="nofollow"
が明示されていないという点からは、”リンク先を支持しないとは言っていない、かつ、リンク先と商業的関係があるとは言っていない(後述のrel="sponsored"
がある場合を除く)” くらいの解釈はできそうです。また、”検索エンジンはリンク先をクロールしても良い(関連付け)” という意味にもなります。通常のリンクなので。
rel="sponsored"
の意味-
rel="sponsored"
は、HTMLの仕様では定められていません。わずかに議論?はあったのかもしれませんが。- Googleの検索セントラルのドキュメントには記載があり(2019年にGoogleが提唱したはず)、
rel="sponsored"
は有料リンク (広告や有料プレースメントのリンク) に対して使用するものとして説明されています。有料リンクに対して、このrel="sponsored"
あるいは前述のrel="nofollow"
を設定しない場合、リンクスパムとして扱われます(すべてのリンクスパムが実際に検知されるかどうかは別として)。つまり、Google ポリシー違反を回避するためには、広告等の有料リンクに対して、rel="sponsored"
かrel="nofollow"
を設定する必要性があるということです。なお、Googleとしては、rel="nofollow"
よりrel="sponsored"
の使用を推奨しているようです(参考)。
Google は、リンクの売買も、広告やスポンサー活動を目的として行われる限り、ウェブ上での通常の経済活動の一環だということを理解しています。こうしたリンクは、rel=”nofollow” 属性や rel=”sponsored” 属性を タグに設定している限り、Google ポリシーに対する違反にはなりません。
出典:Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー | Google 検索セントラル | ドキュメント | Google for Developers
本記事で扱っている案件は、リンク元(今回の場合は当サイト)とリンク先(とあるVPNサービスのWebサイト)の関係者の間に報酬のやり取りという商業的な関係があるので、Googleのドキュメントにおける “有料リンク” に該当します。よって、Google ポリシー違反を回避するためには、その有料リンクに対しては、rel="sponsored"
かrel="nofollow"
を設定する必要性があります。
以下のような例もあります。
nofollow は情報提供元を信用していない場合のみ使用し、すべての外部リンクに使用することは避けてください。たとえば、あなたが大好きなチーズを厳しく批判する記事を誰かが公開したので、あなたはこれに反論する記事を作成することにしましたが、外部リンクを張ることで、リンク先にランキング評価を与えたくありません。このような場合は nofollow を使用するのが適切です。
リンクに関して何かの形で支払いを受け取っている場合は、sponsored または nofollow でリンクを修飾してください。フォーラム セクションや Q&A サイトなど、ユーザーがサイトにリンクを挿入できる場合も、ugc または nofollow を追加します。
出典:Google の SEO リンクに関するベスト プラクティス | Google 検索セントラル | ドキュメント | Google for Developers
なお、ここまでの話は、あくまでWebページのリンク設定方法の話であり、それ自体に法規制がある訳ではありません。また、本記事ではGoogleという1つの検索エンジンの仕組みを例に確認をしているだけであり、他の検索エンジンや他のサービス(SNSや動画投稿サイト等)における扱いについては言及していません。
DoFollowリンクの確認例
以下は、閲覧しているページに掲載されているリンクがDoFollowリンクかどうかを確認する例です(通常のHTMLリンクの場合)。
- DoFollowでないリンクの例 (nofollow)
-
例えば、以下のようなAmazonへのアフィリエイトリンクがあるとします。当サイトに設置してある普通の広告リンクです。
このリンクを、ページのソース表示画面や開発者ツールの要素(DOM)で確認すると、以下のようにリンク(<a>タグ)を確認でき、その<a>タグの中に
rel="nofollow"
という属性値が設定されていることを確認できます(他のnoopenerやnoreferrerといった属性値もありますが、本記事の内容とは関係ないので省略します)。 - DoFollowリンクの例 (nofollowでない)
-
例えば、当サイトからGoogle(https://www.google.com/)へのリンクがあるとします。
同じように、このリンクのソースや要素を確認すると、今度は<a>タグの中に
rel="nofollow"
という属性値は設定されていません。
PR表記の有無 (ステマ規制関連)
あと、PR表記が必須かどうかを当サイト側に確認するやり取りもありましたので、その点についてもまとめておきます。広告表示のことですね。
前述のrel="nofollow"
のようなWebページのリンク設定方法の話とは異なり、広告表示については法令(ステマ規制)で定められたものです。違反時には事業者側が処罰の対象となります。メディア運営者に対する規制ではありません。
ちなみに、本記事で扱っている案件において、PR表記について何か依頼を受けた訳ではないのですが、もしかしたらPR表記を無しにしてほしかったのかもしれません。広告表示は、メディア運営者の立場でなく、事業者側の立場として必須のものなので、当サイト側に必須かどうかを確認するというやり取り自体が変なのですが…。
当サイトでは、適宜、広告表示は行っています。
ステマ規制について以前調べてみた内容は以下の記事にまとめてあります。
残念ですが案件を見送り
当サイトとしては、この案件を見送らせていただくことにしました。当サイトにとっては高額な報酬だったのですが。
DoFollowリンクに関しては、とりあえず意図的なGoogleのポリシー違反は控えておこうというくらいの考えです。ちょっとWeb検索してみたら、そのVPNサービスに対するDoFollowリンクを掲載しているWebサイトを複数確認できたこともあり(後述)。
PR表記(広告表示)に関しては、ステマ規制は事業者の広告に対する規制なので、当サイトとしては直接的に関係はありません。ただ、仮にPR表記を無しにする依頼があったとしても、当サイトでは、すべての記事で一律の広告表示を行っているので、この案件の分だけ広告表示を無しにするというのは、そもそも設定が面倒です。
(余談) rel=”nofollow” の設定漏れと意図的な省略の違い
ちょっとWeb検索してみたら、そのVPNサービスに対するDoFollowリンクを掲載しているWebサイトを複数確認できました(それらのWebサイトはこの案件に取り組まれたのかもしれませんし、本当にそのVPNサービスを支持している方が多いのかもしれません)。
人間(私)が確認する分には、それなりに不自然と言えば不自然な状況なので、Googleがリンクスパム対策アルゴリズムをさらに強化したら、このような形でDoFollowリンクを掲載しているWebサイトは一気に影響を受けることになるかもしれません。これは該当のサイト全体に対するペナルティのリスクになります。現状、広範に適用されているアルゴリズムは無いと思いますが(参考:ペナルティについてのコミュニティでの議論の例)。
そもそも、インターネット上には膨大な量のrel="nofollow"
の設定漏れリンクが存在するはずですが(“うっかり”から”知らなかった”まで)、それらすべてをペナルティ対象にするというのも現実的ではないと思います。そのため、例えば意図的と判断されるようなrel="nofollow"
の設定省略(つまり、有料リンクのDoFollowリンク)を検出するアルゴリズムができれば(もうあるのかもしれませんが)、本来的なリンクスパム対策として有効かもしれません。
ちなみに当サイトでも、ステマ規制対応のため広告表示はしていますが、rel="nofollow"
の設定が漏れている広告リンクはいくつもあると思います。記事を作成する際に設定が漏れることはあるので…。これらは意図的ではありませんが、DoFollowリンクであり、Googleのポリシー違反には該当してしまいます。見つけたら修正した方が良いですね。
まとめ
先日、とあるVPNサービスの紹介記事(そのサービスへのリンク)を掲載するだけで数万円の報酬をいただけるという効率の良さそうな案件をご提示いただいたのですが、”DoFollowリンク” という条件付きだったため見送らせていただくことにした話でした。