ふるさと納税、2024年10月1日から返礼品等を強調した宣伝広告の禁止
総務省告示の改正により、2024年10月1日から返礼品等を強調した宣伝広告の禁止が適用されるそうです。
2025年10月に適用されるポイント付与の禁止(寄付者にポイント等を付与するサイト等を通じた寄付の禁止)の方に気を取られていましたが、2024年時点で適用される改正があるのですね。
当サイトでも、ふるさと納税に関する広告を掲載しているので、この改正の内容を確認しておきます。勉強も兼ねて法令や告示の原文の該当箇所を探してみます。
ふるさと納税を利用される方(寄附をされる方)にとっては、2024年10月以降は返礼品のオススメ紹介やレビュー等が中心のコンテンツ(広告を含むもの)が減ると思うので、”好きな返礼品を選んで寄附先を探す” のは今までよりちょっと面倒になるかもしれません。
ふるさと納税関連の広告が対象
今回の “返礼品等を強調した宣伝広告の禁止” の規制対象は自治体のはずですが(大元が地方税法なので)、巡り巡ってふるさと納税サイトの広告を掲載するWebサイト管理者やSNS利用者等も注意すべき内容になっています。
つまり、ブログ運営やSNS投稿で広告を掲載している人も気をつけましょう、ということです。
私の素人理解としては、以下のイメージです(不正確かもしれませんが)。
※本記事では、ステマ規制(景品表示法)については、本記事では触れません。
※自治体というのは、ふるさと納税制度における都道府県、市町村又は特別区(地方団体)のことです。
※ふるさと納税サイト等の事業者というのは、楽天市場(楽天ふるさと納税)やふるなび等のような仲介サイトのことです。
※本記事では、Webサイト管理者やSNS利用者等が、ふるさと納税サイト等の事業者の広告を掲載するケースを想定しています。ASP経由のアフィリエイト契約等によるものも含みます。
今回の総務省告示の改正は、上記のようにWebサイト管理者やSNS利用者等が掲載する広告にも結果的に影響します。この改正では、Webサイト管理者やSNS利用者等には直接言及していませんが、告示の改正に基づいて自治体やふるさと納税サイト等の事業者が契約内容(個々のアフィリエイトプログラム等も含む)を見直すことにより、Webサイト管理者やSNS利用者等にまで間接的にその影響が及ぶという意味です。玉突き式のような印象です。
返礼品等を強調した宣伝広告の禁止
次に、”返礼品等を強調した宣伝広告の禁止” について、原文含め内容を確認してみましょう。
主な資料は以下のページに掲載されています。※大元の地方税法はこちら
今回の改正を含む見直し全体を1枚にまとめた概要は以下です。
上記のうち、”返礼品等を強調した宣伝広告の禁止” に関し、以下の資料等を確認していきます。
- 確認する資料
- 1.地方税法
-
一応、元の法律である地方税法から辿っていきます。
上記は、ふるさと納税の指定制度(地方税法(昭和25年法律第226号)第37条の2第2項及び第314条の7第2項の規定に基づく指定のこと)に関する記載です。
返礼品等を提供する場合には、寄付金の募集に関して総務大臣が定める基準に適合する必要性があります。
- 令和6年総務省告示第203号 (令和6年6月28日) と、平成31年総務省告示第179号(令和6年6月28日最終改正)
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総務大臣が定める基準、総務省告示です。
“~第179号” が全文で、”~第203号” が今回の改正内容です。
確かに総務大臣の名前で基準を定めていますね。これで前述の地方税法とつながります。
以下のように禁止事項(行わないこと)についての記載があり、
その中で、”返礼品等を強調した寄附者を誘引するための宣伝広告” はもともと禁止されていたのですが、今回の改正で () の部分が追加されています。ここで、自治体が契約するふるさと納税サイト等の事業者が行う宣伝広告も含めることが明確化されました。
法令、告示の内容は上記のとおりです。
以降は、その説明資料です。
- 「ふるさと納税に係る指定制度の運用について」(令和6年6月28日付け総税市第67号)
-
この資料は、上記の改正の説明を含む通知です。
“返礼品等を強調した宣伝広告の禁止” についての説明は以下の箇所。
令和6年10月1日から適用されるので速やかに対応するよう記載されています。
- 「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&Aについて」(令和6年7月16日付け総税市第71号)
-
あとは、より実務的な内容を記載したQ&Aです。
上記は、各種媒体における返礼品等を強調した広告の掲載が、前述の “返礼品等を強調した宣伝広告の禁止” の規制対象になるという説明です。事業者との契約にも規定を盛り込むよう示唆されています。
ここでは具体例がありませんが、”返礼品等の情報が大部分を占めるパンフレット” の作成、配布も該当する旨の記載があります。返礼品のアピールが中心になっているのはNGということですね。後で、実際のふるさと納税サイトの表示内容もチェックしてみます。
寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現の禁止
続いて、”寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” についても合わせて確認しておきます。
ズバリ、という感じの表現がたくさん登場しますね。
従来、「お得」や「コスパ」はよく使われているでしょうし、ボリュームやオマケのアピール、また割安感を表現するため寄附金額の引き下げや増量に言及するケースもあるかと思います。あとは、寄附なのに、「セール」、「買う」、「購入」、「還元」といった表現が登場するのもあるあるですね。
この項目は広告とは関係なく、情報提供を行う場合に対象となる規制のようです。
ただ、自治体と契約したふるさと納税サイト等の事業者が行う表現も対象になるということが補足されています。つまり、自治体と契約した事業者が表示する内容は基本的に広告に該当するのでしょうが(情報提供が主目的とは言えない)、だからといって、この “寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” に関する規制を免れることはできないということです。
ちなみに、自治体と直接的に利害関係の無い第三者による情報提供の内容が “寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” であったとしても、それはさすがに地方税法で規制することはできないと思います。これを悪用したステマが増えそうですが、それは事業者主導のステマであればステマ規制の話になるのかと。
実際のふるさと納税サイトの表示内容
2024年9月時点(今回の改正の適用前)で、楽天ふるさと納税を例に、どんな表示内容になっているかチェックしてみましょう。このようなふるさと納税サイトの表示内容は、今回の改正で規制対象となる “宣伝広告” に該当するはずです。
例えばトップページ。 “人気ランキング” タブがあり、返礼品ランキングに簡単にアクセスできるようになっています。これは、返礼品が強調されてますかね…されてそうですよね。
その画面をスクロールすると、しっかりと人気のある返礼品(自治体への寄附案件)のランキングが表示されます。それぞれの内容は、返礼品の写真、ランキング順位、タイトル(返礼品の名称を含む)、必要な寄附額、口コミ評価(ほぼ返礼品の話題)、そして最後に薄めの文字で自治体名が記載されています。これも、返礼品が強調されてますかね…されてそうですよね。
個々の返礼品(自治体への寄附案件)のページについても、もちろん返礼品の説明が中心です(省略)。
試しに、寄附を申し込むため、買い物かごに追加して確認してみます。そもそも “買い物かご” なので、寄附でなく “買う” という表現に関連しています。その他、”商品” や “39ショップ”、”ご購入手続き”、”この商品を買った人” 等、前述の “寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” に該当しそうなワードが次々と…。
楽天市場がECサイトということもあり、このように、あたかもショッピングであるかのような表現が多いです。また、楽天ふるさと納税は、タイミングを合わせれば楽天スーパーSALEや楽天お買い物マラソンと併用もできるので、基本構造からしてECサイトの一部と言えます。
一方で、ふるなびの方は、やや控えめで、”買い物かご” でなく “カート” という表現になっていますし(寄附をするに際してのカートとは…という気もしますが)、”購入” といった表現はパッと確認したところ見当たりません。
2024年9月時点でざっと確認したところ、このような表示内容でした。これらが今回の改正で規制対象になるんでしょうか。だとしたら修正するのが大変そうですね。
ふるさと納税の趣旨とは
そもそも今回の改正は、ふるさと納税の指定制度が本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われるようにするためのものとあります。なので一応、趣旨を確認しておきましょう。
以下は、告示から。
“ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し、若しくは応援する気持ちを伝え、又は税の使い途を自らの意思で決めることを可能とすること” が趣旨とあります。
次に、改正の説明資料です。
返礼品についても、”当該返礼品等そのものが地域における雇用の創出や新たな地域資源の発掘等、当該地域経済の活性化に寄与“、”地域経済の活性化につながっているか、当該地方団体の区域内において付加価値が生じているか” といった観点が求められています。
ただ、このあたりの趣旨と実態については、議論も多いところかと思います。
感想
ふるさと納税制度と今回の改正に関する、個人的な感想です。
仮に上記の趣旨を建前だとすると、ホンネ(実情)としては、寄附者が返礼品や税控除という経済的利益を目的として寄附するという行動が、この制度の規模を拡大させている主要因だと思います。つまり、自治体と寄附者のニーズを無理やりマッチングさせる経済合理性です。このようなホンネなら、建前との間に乖離があると思いますし、構造的な矛盾を感じます。
もちろん、本当に応援したい自治体を選ぶ機会や、税金の使い道を考える機会にもつながるケースもあるでしょう。様々な良い効果もあると思います。
そして、今回のような “返礼品等を強調した宣伝広告” や “寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” の規制についても、その制度運用が適正化される効果は多少あるのでしょうが、一方でこの制度が抱える矛盾を強調し、ホンネが表に出てこないようにするためのタブーを増やしてしまうように思います。
返礼品等を強調することが趣旨に沿わないというのは理解できます。この制度がそもそも “寄附” であり、一部に税金(地方交付税)も使用されています(後述)。過度な競争も抑止しないといけません。かと言って、タブーだらけで建前ばかりになってしまうのも窮屈です。難しいですね。
また、ふるさと納税制度に関するアフィリエイトそのものも微妙な印象です。返礼品の感想やレビューも、必然的に返礼品を強調することになりますし、”お得” のような表現も前述の禁止ワードに該当します。広告として掲載する方法が限られることになります。
なお実際に、”返礼品等を強調した宣伝広告” や “寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” に対する規制がどのくらい厳密に運用されるかについては、改正が適用される10月以降の状況から判断することになると思います。
(補足) ふるさと納税の規模とお金の流れ
補足情報です。
ふるさと納税の規模は拡大しています。
2023年度には、ふるさと納税の寄附総額は1兆円を超え、利用者も1,000万人を超えています(参考)。
ふるさと納税によって他の自治体に流出した税収については、その額の75%が地方交付税によって補填される仕組みです(参考)。
その制度の運営自体に税金が使用されています。
こんな情報発信も参考になります。
まとめ
総務省告示の改正により、2024年10月1日から返礼品等を強調した宣伝広告の禁止が適用される件についてまとめてみました。
当サイトの記事も、”返礼品等を強調した宣伝広告” や “寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現” が無いよう、近日中にチェックしておこうと思います。