“反転”して見えるケースまとめ
別記事にて、”鏡に映すと上下でなく左右だけ反転して見えるワケ”をまとめました。
以下がメイン記事です。
その”鏡の反転問題”を考えるためには、まず”反転”という状態を把握する必要性がありましたので、本記事を補足記事としてまとめます。
なお、専門知識は無いので、記事中では用語を適宜定義しています。
また、説明に使用している図も若干リアリティには欠けますが、ご了承ください。
前提
用語定義
“鏡の反転問題”に関する用語全般については、メイン記事の方にまとめます。
ここでは、本記事で主に用いる構成要素について説明します。
構成要素と関係性
観測者と対象物
観測者と対象物があるとします。
観測者
見る主体です。
本記事では、観測者は”人”を指します。
対象物
見られる対象です。
本記事では、対象物は、反転を識別しやすいよう、左右と上下が非対称であり、また裏返せるものとします。
具体的には、以下のように半透明のカードに文字”R”と書いたもの(のようなもの)を対象物として用います。裏から見ると、文字が透けて見えます(※)。
“R”という文字は左右、上下がそれぞれ非対称です。
(※)文字が裏から透けて見えるということは、書かれた文字は”表裏(前後)が対称”のように見えます。詳細は余談として後述します。
この文字カードを見るための方向を6つ考えたとき(前(表)から、後(裏)から、上から、下から、左から、右から)、文字を上下左右を正しく見ることができる方向は1つだけです。
観測者は対象物を見る
観測者は対象物、あるいは、対象物の像(鏡による反射時)を見ます。
その際、観測者から対象物がどのように見えるかについて、考えていきます。
反転とは
本記事で扱う “反転” は、見え方の違いを表したものです。
つまり、見る主体である観測者がいる場合にのみ、”反転” が発生します。
観測者が対象物を見た際、その見え方が、基準となる別の見え方と比較して特定の違いがある場合、その見え方は “反転” していると言えます。
具体的には、以下3つの条件をすべて満たした状態を、”反転”として扱います。
- 1. 観測者(見る主体)がいる
- 2. 観測者の視線で対象物を見た際、その見え方を、基準となる別の見え方と比較できる
- 3. 比較の結果、以下のいずれか、もしくは以下を組み合わせた違いがある
- 基準となる見え方では右側にあった部分が左側に見えて、逆に左側にあった部分が右側に見える(左右反転)
- 基準となる見え方では上側にあった部分が下側に見えて、逆に下側にあった部分が上側に見える(上下反転)
- 基準となる見え方では前(表)側にあった部分が後(裏)側に見えて、逆に後(裏)側にあった部分が前(表)側に見える(前後反転)
左右反転、上下反転、前後反転の3種類を挙げました。
組み合わせて、上下左右反転、等もあります。
※他の要素の反転(色、明暗、等)については、本記事の対象外です。
反転が発生するケース
カードに書かれた文字”R”の反転が発生するケースを3つ挙げます。
これらは、鏡の反転問題を考える上でのパラメタです。
No. | 分類 | 動作 | 発生する反転 |
---|---|---|---|
1 | 対象物の向き | 対象物を裏返す | ・前後反転 ・裏返す方向に反転(左右、上下) |
2 | 観測者の向き | 観測者が対象物の裏に回り込む | ・前後反転 ・回り込む方向に反転 (左右、上下) |
3 | (光の)反射 | 鏡に映った像を見る | ・鏡面に対して垂直に反転 (左右、上下、前後) |
本記事は、鏡の左右反転問題を整理するためのものなので、上記の3つに絞ります。
他にも “反転” が発生するケースはあると思いますので、本記事の最後に少し触れます。
なお、文字カードを裏から見た場合に、左右反転あるいは上下反転しているかどうかは、裏から透けて見える文字の見え方によって判断します。
順に説明していきます。
1 [対象物の向き] 対象物を裏返す
観測者は正面から対象物(カード)を見ており、その視線を固定した状態とします。
左右、あるいは上下にカードを裏返すと、裏面から透けて見える文字は、それぞれの方向に反転します。
また、裏面を見ることになるので、前後も反転します。
↓
↓
↓
同じ向きに2回、裏返すと、反転した状態ではなくなり、元に戻ります。
あとは、上下左右といった90°単位の方向でなく、斜めに裏返すこともできます。これは角度が違うだけです。
2 [観測者の向き] 観測者が対象物の裏に回り込む
次は、対象物(カード)を固定して、観測者の視線を変えます。
回り込む方向に応じて、反転する方向が決まります。
観測者が上(あるいは下)から回り込むと、裏面から透けて見える文字は、上下反転します。
観測者が右(あるいは左)から回り込むと、裏面から透けて見える文字は、左右反転します。
また、裏面を見ることになるので、前後も反転します。
※実際には、”回り込む”と言うと、左右反転の方を想像される方が多いかと思います。
前述の対象物を裏返す動作と同様、同じ向きに2回、回り込むと、反転した状態ではなくなり、元に戻ります。
あとは、上下左右といった90°単位の方向でなく、斜めに回り込むパターンもありますが、角度が違うだけなので省略します。
3 [反射] 鏡に映った像を見る
次は、観測者と対象物(カード)を固定して、鏡に映った像と比べます。
鏡による反射です。
当初の疑問、”鏡に映すと上下でなく左右だけ反転して見えるワケ”については、メイン記事の方にまとめますので、ここでは基本的な概念を記載します。
鏡に映った像は、鏡面に対して垂直に反転する
反射の原理としては、”鏡に映った像は、鏡面に対して垂直に反転する” と言えます。
大きく2つに分けて、視線と並行に鏡を置く場合と、視線と垂直(対面)に鏡を置く場合について説明します。
視線と並行に鏡を置く(対象物と対面)
まずは、鏡を対象物に対する視線と平行に置きます。
対象物は、観測者と対面し、その表面が観測者の方を向いています。
鏡を横に置くと、観測者から見て左右の方向に反転します。
鏡を下に置くと、観測者から見て上下の方向に反転します。
上記は、”鏡に映った像は、鏡面に対して垂直に反転する” という原理に合致します。
あとは、上下左右といった90°単位の方向でなく、斜めに置くパターンもありますが、角度が違うだけなので省略します。
対面に鏡を置く(対象物と同じ向き)
鏡を、観測者の対面に置きます。
対象物は観測者と鏡の間にあり、その表面は鏡の方を向いています。観測者と同じ向きです。
観測者が、鏡に映った像を見ると、文字が(正しく読める見え方と比較すると)左右反転して見えます。
このような見え方になる理由は、鏡の反射だけでは説明できず本記事の範囲を超えてしまうため、別途メイン記事の方をご覧ください。
シンプル版
本記事では、基本的な概念を説明するため、もう少しシンプルな図に置き換えて、以下のように確認します。
矢印が描かれたカードです。
※便宜上、観測者は少しだけ斜めから見ています。
鏡に映った像を見ると、矢印の向きが逆になっており、”鏡に映った像は、鏡面に対して垂直に反転する” という原理に合致します。
鏡面に対して垂直な方向を”前後”だとすると、前後に反転していることになります。
“表裏”の場合も同様に反転します。
(参考) 2枚の鏡を使うと反転しない像も見える
2枚の鏡を使うと、反射の反射で、反転しない像も見えます。
(図は不正確ですが、イメージとして…)
まとめ
本記事では、”反転” が発生するケースについてまとめてみました。
この記事の内容をもとに、メイン記事の方で “鏡に映すと上下でなく左右だけ反転して見えるワケ” を考えていきます。
余談
表裏(前後)の対称、非対称
本記事では、半透明(※)のカードに”R”と書いたもの(のようなもの)を対象物として用いました。
“R”という文字は左右、上下が非対称ですが、その文字が裏から透ける場合、書かれた文字は”表裏(前後)が対称”のように見えます。
※付着したインクの量が表裏で違うという意味では非対称になりますが、それは本記事の主旨と異なるのでひとまず省略します。
鏡の反転問題には "表裏(前後)が対称" が便利
鏡の反転問題を考える上では、対象物は”表裏(前後)が対称”の方が便利かと思います。
表裏(前後)が非対象なもの
表裏(前後)が非対象なものと比べてみます。
以下に表裏(前後)が非対象のものの例を挙げます。
-
表面にのみデザインが印刷されたポスター
(裏面は無地で、また裏面からデザインが透けて見えない) -
硬貨や紙幣
(少なくとも日本通貨では、表面と裏面、それぞれに全く異なるデザインが施されている)
例えば、上記のポスターを対象物とした場合、そのポスターの裏返しや、あるいは観測者の回り込みをしても、無地のポスター裏面が見えるだけです。
もちろん、透けない分シンプルなので、一部のことを分かりやすく説明できるというメリットはありますが、その一方で”反転”という状態を俯瞰しづらくなるというデメリットもあります。
表裏(前後)が対象なもの
対して、”表裏(前後)が対称”な対象物を用いた場合、その対象物の裏返しや、あるいは観測者の回り込みをすると、(表面と対称な)裏面を見ることで、本記事であれば “R” という文字を構成するパーツの上下、左右の位置関係を確認し、”反転”という状態を俯瞰しやすくなります。
そのような理由から、本記事では”表裏(前後)が対称”に相当する半透明なカードを説明に用いています。
その他の反転
他の”反転” について、簡単に記載しておきます。
-
印鑑や版画
印鑑や版画のように、転写して使うものも、文字や絵柄が反転したときに正しく見えるようになっていますね。 -
OHP(Overhead projector)
OHPというものを今では見ることは無いですが、透明なシートを使って投影する際に反転します。 -
画像処理
光学や認知とは関係が無いですが、コンピュータを用いた画像処理による反転もあります。
自分で実験してみる場合 (自由研究や大人の趣味として)
小学校の自由研究や、大人の趣味的な楽しみとして、実際に試してみるのもオススメです。
以下のようなグッズがあれば、本記事に書かれているような実験ができるでしょう。
まず文字カードです。何か半透明のカード状のものがあれば良いですが、半透明の下敷きでもOKです。
マスキングテープや油性ペンで文字や記号を書けます。
以下は、A5サイズ(148×210mmより少し大きめ)です。A4の半分です。カットして使う場合はケガに気をつけましょう。
鏡は、実験のためだけではなく、家の中で普通に使えるものが良いと思います。
ただ割れるとケガの心配もあるので、ややコンパクトで割れない鏡が良さそうです。実験が終わったら、トイレや玄関等のスペースに置いて身だしなみチェック用の鏡としても使えます。
以下は2枚セットです。
大きな鏡でも実験しやすいと思います。
さらにオプションとしてカメラがあると、”カメラで観測者自身を見る” という視線も試せるので、実験のバリエーションが増えます。