2024年こそ始めたいスギ花粉の舌下免疫療法
毎シーズンのキツい症状や、面倒な予防と対症療法が嫌になっている方も多いかと思います。
スギ花粉症の話です。
近年、注目を集めつつある舌下免疫療法 (ぜっかめんえきりょうほう) という治療法があり、花粉症の私は昨年 2023年にこの治療を始めようと医師に相談したのですが、なんと需要が多すぎて既に新規開始向けの薬の供給が制限されている状況でした…そのため治療を開始できず。残念。
本記事では、今年こそは治療を開始したいと考えながら、スギ花粉のアレルゲン免疫療法の1つである舌下免疫療法とその薬の製造、供給状況についてまとめます。
花粉症対策の種類
政府は花粉症を “社会問題” として位置付けています。
大げさかもしれませんが、症状がキツいときの生産性やQOLの低下はなかなかのものです。
個人ができる対策として、予防、対症療法、アレルゲン免疫療法の3つがあります。
本記事では、上記にあるアレルゲン免疫療法のうち、舌下免疫療法についての話をします (注射するタイプの皮下免疫療法については触れません) 。
舌下免疫療法とは
舌下免疫療法 (ぜっかめんえきりょうほう) は、アレルゲン免疫療法の1つです。
花粉症の場合だと、花粉に触れても症状が出ないようにするための治療法です。
アレルゲン免疫療法は、からだをアレルゲンに慣らして、症状を和らげたり、根本的な体質改善が期待できる治療法です。
出典:舌下免疫療法Q&A|舌の下(したのした)で行う鳥居薬品の舌下免疫療法専門サイト
スギ花粉症の場合はスギ花粉を、ダニアレルギー性鼻炎ではダニのアレルゲンを含む治療薬を用います。
概要は上記のとおりで、タブレット状の薬を毎日飲み続けます。
治療期間は3年以上が推奨されています。
費用は、保険適用 (3割負担) での概算で 1,500円/月 程度とされています (参考)。
舌下免疫療法は、薬を長期間飲み続ける必要性があるため、日常生活に多少の負担はかかります。しかし、効果が出れば花粉症自体に悩まされなくて済む可能性があるので、この治療を希望される方は多いでしょう。
舌下免疫療法を受けられる人
スギ花粉の舌下免疫療法を受けられるのは、スギ花粉症と診断された人です。他にも条件があるので、医師への相談が必要です。
医師からスギ花粉症と診断されたかたが対象です。喘息、自己免疫疾患の患者さんや全身性ステロイド薬や抗がん剤、一部の降圧剤など使用中の患者さんや、歯科治療中のかたなどは受けられません。なお、舌下免疫療法については、5歳未満は受けられません。治療開始前に必ず主治医の診察を受けて、確認してください。
出典:政府の花粉症対策 | 政府広報オンライン
8割の人に効果ありというデータ
千葉大学医学部附属病院等の調査で、この舌下免疫療法により8割程度の方に効果があったことを示す結果があります。記事の日付や内容からの私の推測ですが、治療開始からおそらく5~8カ月程度 (アンケートや集計にかかる期間のタイムラグがあればそれよりも短い期間) の患者さんへのアンケート結果かと思います。
おそらく以下のニュース記事が上記の調査結果に対応しています。
作用機序は未解明
意外と、この治療法がなぜ効くのか (作用機序) については、十分に解明されていないそうです。
・見つけよう!あなたに合った治療法 https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/material/slit_pt.pdf
・Q11. シダキュアの作用機序は? https://www.torii.co.jp/iyakuDB/faq/cdc_faq_10.html
服用前後の制約
薬の服用前後2時間は激しい運動や入浴、飲酒を避ける必要があります。
・Q7. シダキュアを服用する前、及び服用後2時間、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避ける理由は? https://www.torii.co.jp/iyakuDB/faq/cdc_faq_05.html
・Q6. シダキュアを服用後、5分間うがいや飲食してはいけない理由は? https://www.torii.co.jp/iyakuDB/faq/cdc_faq_04.html
私は2023年に治療開始できず…
私としては、毎シーズンのキツい症状や、面倒な予防と対症療法が嫌になっているので、この舌下免疫療法を受けたい訳です。
…が、冒頭で触れたとおり、2023年には開始できませんでした。
薬の供給が足りない
その理由は、特に昨年2023年は花粉の飛散量が多く、この舌下免疫療法の開始を希望される患者さんも多かったようで、新規開始向けの薬の供給が制限される状況になっていたためです。2023年8月頃の話です。
というのは、舌下免疫療法に使われるこのシダキュアという薬、スギ花粉から作るそうで。
つまり、スギ花粉が採れないと薬が作れないのです。鳥居薬品の花粉採取事業 (委託) や、採取した後のアレルゲン抽出や製剤、包装する工程との兼ね合いがあります。
そういう治療なので仕方ないのですが…。もうちょっと早く医師に相談していたら間に合っていたかも。
ちなみに私が調べた限りでは、このスギ花粉症の舌下免疫療法に用いられる薬は、国内ではこの鳥居製薬のシダキュアのみです。上記のように薬の製造方法が特殊っぽいので、増産するのも大変そうな気がします。
2024年のシダキュアは足りるの?
2023年5月、なんと厚生労働省から鳥居薬品に直々のお手紙 (事務連絡) が。増産しなさいと。言われなくてもさすがに分かってるでしょうが…。
もちろん鳥居薬品としても、この需要を中長期的に見極めながら、供給拡大に取り組んでいく方針です。2023年8月時点で、30億円規模の設備投資も実施予定とのこと。頑張ってください。
医療関係者向けにも随時情報発信されています。
重要なお知らせ → 限定出荷継続のお詫び及び増産体制に向けた取組み状況 シダキュア スギ花粉舌下錠2,000JAU https://www.torii.co.jp/iyakuDB/info/notice2.html
私が治療開始する分は確保できるのでしょうか。心配です。
舌下免疫療法の初期に使用されるシダキュアの 2,000JAU (増量期製剤) は 2024年も限定出荷が継続されるようで、新規の治療開始はそれなりの早い時期に締め切られる予感…
(参考) その他の舌下免疫療法
鳥居薬品では、上記のスギ花粉の舌下免疫療法に用いられるシダキュアの他、ダニの舌下免疫療法に用いられるミティキュアも製造しています。
また、イネ科花粉の舌下免疫療法に用いられる薬 (GRAZAX) も販売予定とのこと。2023年に、今後デンマークの ALK-Abelló A/S 社とライセンス契約が締結されています (参考)。鳥居薬品は、ALK-Abelló A/S社と 2011 年以降、前述のミティキュアやシダキュア等の製品においても協業しているそうです。
まとめ
本記事では、注目されつつあるスギ花粉のアレルゲン免疫療法の1つである舌下免疫療法とその薬の製造、供給状況についてまとめてみました。
今年こそは始めたいです。